蝉の声が、夏の記憶をよみがえらせる朝

日常の発見と感動

1.蝉の声で始まった、ある夏の朝

朝、窓を開けた瞬間に、耳に飛び込んできたのはミンミンゼミの声でした。
けたたましいようで、でもどこか懐かしくて。
一気に「夏が来た」と、体よりも心が先に反応していました。
いつもなら慌ただしく準備をして出かける時間。でもその日は、蝉の声に足を止めて、しばらくぼーっと外を眺めていたのです。

目に入る景色はいつもと変わらないのに、音だけで一気に情景が変わる。
それが蝉の声の力なのかもしれません。


2.音がよみがえらせる、子ども時代の夏

蝉の声を聞くと、自然とよみがえってくるのは、小学生のころの夏休み。
虫取り網を片手に、公園でセミを追いかけていたあの日。
汗だくになりながらも夢中になっていた時間。
家に帰れば、麦茶とスイカが待っていて、扇風機の前でうちわをパタパタ。

大人になると、あの頃のように「1日が長い」と感じることは減りました。
けれど音だけは、時を超えて私を連れ戻してくれる。
蝉の鳴き声には、そんな不思議な力がある気がします。


3.忙しない日常に、立ち止まるきっかけをくれる

「うるさいなあ」と思う日もある蝉の声ですが、
それすらも「夏だからこそ」の風物詩。
今日はその声が、私にひとつの余白をくれました。

朝からバタバタする日々の中で、ふと立ち止まること。
それって、意識しないと意外とできないものです。
だからこそ、自然の音が「今ここ」に引き戻してくれる瞬間が、愛おしく思えました。


4.いつかの私に、また出会える季節

記憶の中の夏は、いつもどこかキラキラしています。
実際には暑くて汗だくで、虫も多くて大変だったはずなのに、
思い出すと、なぜか心があたたかくなる。

蝉の声は、そんな記憶を呼び起こしてくれる。
それは、ただの懐かしさじゃなくて、
“あのときの私”にまた会えるような感覚です。

大人になった今、同じように感じる瞬間があること。
それ自体が、ちょっとした発見でした。


5.今年もまた、季節が教えてくれること

毎年、似たようで違う夏がやってきます。
同じ場所にいても、同じ景色を見ても、
そのときの自分の感じ方が、少しずつ変わっていることに気づきます。

「今年は去年よりちょっと心に余裕があるかも」
「思い出すことが増えたなあ」
そんなふうに、季節と一緒に自分も育っているのかもしれません。

蝉の声がうるさく感じる日も、ありがたく感じる日も、
きっとすべてが今だけのもの。
今日という夏の一日を、静かに大切に味わいたくなった朝でした。

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